世界中の誰よりも

また溢れ出した涙をごまかすみたいに、ハンカチを再び押し当てる。

何も答えないまま、また泣き出したあたしに祐司がうろたえる。


「なんだよ、不満なのかよ」


あたしは否定を表すためにブンブンと首を振った。
それでも顔はまだ上げられない。


「納得いったんだな?」


優しく、トンと肩を叩くように祐司が聞く。

あたしはコクりと小さく頷いた。


役割や、同情なんかであたしと居たんじゃないってこと。

それが分かって、なんだか胸の中の鉛が溶けていったみたい。

加奈子が言っていた。
ボランティアなんかじゃないよって。

優しい人は、同じように優しい人の気持ちが分かるのかもしれない。
< 212 / 264 >

この作品をシェア

pagetop