世界中の誰よりも
その時、ピュウッと冷たい風があたし達の間を通っていった。
「うー、さみぃ」
祐司がぽつりと零し、肩をすくめる。
「あ、あのさぁ!」
「ん?」
寒そうに眉を寄せたまま、祐司はあたしに視線を寄越した。
あたしはバッと鞄の中から包みを取り出す。
「これ、あげる!」
目を見ることは出来なかった。
だけど真っ直ぐに祐司に包みを差し出した。
「なに?」
「別に、ちょっとお礼。色々と」
「へぇ」
そうして祐司はあたしの手からひょいと受け取る。
「あ、マフラーじゃん。良い色だな」
パッと視線を上げると、祐司は包みから取り出したマフラーを首にかけて笑っていた。