世界中の誰よりも

振り返るとそこには、仕事帰りの父が居た。


「お父さん!」


父はあたしと祐司の顔をチラチラと見比べている。

ヤバイなぁ。

男の子と居る所なんて見られたら、まだ学生のくせになんて、お説教をくらうかもしれない。


「あ、学校の先輩なんだ。送ってくれたの」


慌てて祐司を紹介すると、祐司はペこりと頭を下げた。

父は少し複雑な顔を見せたけど、「そうか、ありがとう」とだけ言って先に家に入って行った。


あたしは祐司にお礼を言って別れ、父の後に続く。


「これ、大事に使うわ」


帰り際にマフラーの端ををつまみ、祐司が言った。

あたしはそれに笑顔を返した。
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