世界中の誰よりも
玄関を上がろうとする父に追いつき、靴を脱いでいると。
「……幸も男と付き合う歳になったんだな」
ぽそりと呟いた父の横顔を見ると、なんとなくショボンとしている。
いや、祐司とは付き合ってないんだけど。
今はそんな事より、思いがけずしょんぼりとした父に思わず吹き出しそうになる。
「何、お父さん。寂しいの?」
笑いをこらえてそう言うと、父はわずかに顔を赤くしてそっぽを向いてしまった。
「うるさい。……男親なんて空しいもんだな」
ハァーっとため息に混ぜてそう言うものだから、あたしはついに笑ってしまった。