世界中の誰よりも
「やだお父さん、スネないでよ」
「スネてなんかない!」
「あらあら、どうしたの?」
あたし達の声に気付いて、母もキッチンから出て来た。
「聞いてよお母さん。お父さんったらね」
「こら、幸!」
あたしの言葉を父は慌てて遮る。
父にまさかこんな可愛らしい所があったとは。
厳しいだけの父だと思ってたけど、あたしを大事に思ってくれてるんだって実感する。
顔を赤くして慌てる父に、あたしも母も笑う。
また、近づけた。
わざわざ確認することじゃないんだけど、あたし達は「家族」なんだなって思えた。
キッチンから夕飯の良い匂いがしていた。