世界中の誰よりも
冷えた空気に身を縮めながら歩いていると、前方に見慣れた後ろ姿を見つけた。
首にはグレーのマフラー。
「祐司君!」
あたしは声をかけて、小走りで祐司に追いついた。
「おはよう」
少し荒くなった息を押さえてあたしが言うと、祐司はニッコリと笑う。
「おう。寒いのに朝から元気だな、幸」
あたしはえへへって、ちょっと笑ってみせた。
この頃あたしが思うのは、祐司に呼ばれる「幸」が、なんだか特別に響くこと。
ちらりと背の高い祐司の横顔を見上げると、祐司はマフラーに首を埋めていた。