世界中の誰よりも
・オトナになる
冬を越えればすぐ訪れる、別れの季節。
今日、祐司が卒業する。
「早く! 祐司先輩帰っちゃうよ!」
卒業式の後、あたしは加奈子と愛美と一緒に、3年生のクラスに向かっていた。
卒業生との別れを惜しむ下級生でごった返した廊下。
ノロマなあたしを加奈子が引っ張ってくれる。
チビの愛美はあたしの後に必死でついて来る。
「あ、ここだ! 祐司君のクラス」
やっとの思いでたどり着くと、教室の前にひしめく人を掻き分けて中を覗く。
すると、見慣れた黒髪の二人と目が合った。
「拓海君、多喜さん!」
「幸、久しぶりだね」
拓海君は多喜さんの手を取り、こちらに来てくれた。