世界中の誰よりも
「卒業おめでとうございます」
「ありがとう」
拓海にきちんとお祝いを言ってから、教室の中をちらりと見る。
その視線に気付いたのか、拓海がフッと笑う。
「祐司だろ? あそこに居るよ」
拓海が指差した方には、ワイワイと賑やかな集団があった。
その中に、はしゃいだように笑う祐司を見つけた。
みんなとじゃれ合っていて、まだまだ帰る様子はない。
「アイツ友達多いから。しばらく解放されないんじゃないかな」
「拓海君と多喜さんはもう帰るんですか?」
「帰るよ。早くばあちゃんに卒業証書見せてやりたいから」
拓海君はそう言って笑った。そう言えばお祖母さんと住んでるって言ってたっけ。