世界中の誰よりも
あたしは拓海の隣で終始穏やかに笑っている多喜さんに目をやる。
「お二人は同じ大学に行くんですか?」
「いや、俺は就職」
「私は県内の私立に行くよ」
二人があまりにもケロッと言うものだから、あたしは拍子抜けした。
「離れちゃうんですね」
あたしがそう言うと、拓海はまたケロリと言う。
「大したことじゃないよ。多喜だって県内だし」
多喜さんも同意するようにニコニコ笑っている。
目には見えないけど、そこには二人の絆があるように思えた。
「で、どうする? 祐司呼ぼうか?」
「あ、いえ。あたし外で待ってます」
「じゃあ一応俺から祐司に声かけとくよ」
「ありがとうございます」