世界中の誰よりも
シンと静まる公園。
ベンチのそばの街灯で、ぼんやりと照らされるあたし達。
信也は喋ろうと言ったのに、なぜか黙ったまま。
妙な緊張があたしを包む。
すると肩にふわりとした感触を感じた。
「幸、キスしようか」
肩に乗せられた信也先輩の手に力が入る。
キス。
初めての、キス。
心臓がやばい。
手の平には汗が滲み始める。
こわい。
でも、してみたい。
あたしは小さく頷いた。
信也先輩の顔がゆっくりと近付いてくる。
一瞬、怒鳴る父の顔がチラついたけど、あたしはそのまま目を閉じた。