世界中の誰よりも
「ご新婦様はこちらでお待ち下さい」
指示された通りに、あたしは大きな扉の前に立つ。
右手を、父の左腕に添えて。
「とうとうお前も嫁に行ってしまうのか」
「ふふ。お父さん、寂しい?」
からかうようにそう言うと、父は不服そうにそっぽを向いた。
祐司と同じ大学に通い、あたしと祐司はじっくりと絆を深めて行った。
喧嘩をして、泣いて、笑って。
相手を思いやることを学んだ。
自分より誰かを大切にしたいと思えた。
あたしは祐司と一緒に居ることで、少しずつ成長できたと思う。