世界中の誰よりも
ちらりと横を見ると、緊張と寂しさのせいか珍しく眉を下げた父の横顔。
不意に笑いが込み上げるのを堪えた。
たくさん心配をかけた反抗期。
見離さないで、側に居てくれてありがとう。
声に出すのは照れ臭いから、心の中だけで勘弁してね。
「幸」
「うん?」
「お前が生まれて、立派に成長して、父さんは幸せだ」
父の言葉で、あたしは自分の名前に込められた意味を知った気がした。
あたしは幸せになる。
そして誰かを幸せにする人にならなくちゃいけない。
父と母はきっとそれを願っている。