世界中の誰よりも
結婚が決まってから、私は父や母との日々を噛み締めるように思い出していた。
父もまた思い出しているのだろうか。
祐司と結婚の報告に実家に帰った時、父は複雑な顔をしていた。
歳の離れた兄は早々と結婚して家を出たため、父も寂しいのだろう。
「はい、できましたよ」
鏡に写るのは花嫁姿に変身した私。
隣で母が満足そうに微笑んでいる。
「そろそろお時間です」
私はドレスの裾を持って立ち上がり、開けられた扉をくぐった。