世界中の誰よりも

「話があるんだけど」


あたしがそう言うと、母はさらに意外そうな顔を見せる。

あたしから話をするなんて珍しいから、驚いて当たり前か。


「バイトしたいんだ」

「バイト? どこで?」

「それは今探してる。ね、いいよね?」


母は少し眉を寄せて悩む仕草をした。


「社会勉強にもなるし、私は良いけど……」


なんだか嫌な予感。
あたしは母の言葉の続きを待った。


「お父さんに相談しなさい。それから決めましょ」


あたしは心の中で、うげ、と呟いた。

父とは極力話したくない。もしも反対などされたら、一層面倒だ。
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