世界中の誰よりも
父が好物のコロッケを口に運んだ時、あたしはやっと切り出した。
「お父さん、あたしバイトしたいんだ」
父はちらりとあたしを見ると、コロッケを咀嚼して飲み込んだ。
「どうしてだ」
家に居たくないから、なんて言える訳ない。
「お金が欲しいからだよ」
「ちゃんと毎月小遣いをやってるじゃないか」
父は濃いめにいれたお茶をずずっとすすった。
あたしの毎月のお小遣は5千円。
これだけで遊びや洋服や化粧品をやり繰りしなきゃいけない。