世界中の誰よりも

父は一層強く腕を握り、あたしを見据える。


「今好き勝手やっていたら、将来困ることになるんだ」

「そんなの分からないじゃん」

「お前は子供なんだ。視野が狭くて、無知なんだ」


その言葉をあたしは聞き流すことは出来なかった。

あたしにはバイトを始めて、視野を広げようって思いもあった。

あたしはあたしなりに、成長しようとしてたんだ。

なのに父は何も知らないで、あたしを責める。


「お父さんはあたしのこと、何も分かってない」


あたしは腕を勢い良く振って、父の手を払った。


「あたしはバイトを辞めない! 家庭教師も要らない!」


そう言ってあたしは部屋を飛び出した。
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