世界中の誰よりも
・胸の泥
あたしは一人ふらふらと家路に着く。
何組かのカップルとすれ違うけれど、あたしはなんだか汚らわしいような、羨ましいような気持ちで見ていた。
行き交う恋人達は、どうしてあんなにも幸せそうなんだろう。
どうしてあたしはこんな気持ちで、俯かなきゃならないんだろう。
家の玄関の前まで来て、あたしはまたさらに重たい気持ちで扉を開く。
柔らかい光がじわりと流れ、あたしに触れた。
「また遊び歩いていたのか。まったく、気楽なものだな」
いきなりあたしを迎えた父が発した言葉は、あたしの心をフツフツとさせた。