世界中の誰よりも

ぴくりとも動かずに突っ立っているあたしに、振り向いた父が気づく。


「何やってるんだ。暇なら勉強でもしてなさい」


言われなれた言葉だった。なのにこの時のあたしには、身体に網をかけられたような気持ちだった。

欝陶しくまとわり付いて、上手くのけられない。


言いようのない苛立ちが沸き起こり、胸のあたりがざわざわとした。

あたしをじっとりとした視線で責める父。

気持ち悪い。
欝陶しい。


どろどろとした感情を吐き出したくて、あたしは思い切りテーブルの上を払った。
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