世界中の誰よりも
あたしの胸はぐらぐらと煮え立っていた。
嫌悪感と興奮で、わずかに吐き気がする。
左手に自分の部屋に続く階段が見えたけど、あたしはそのまま直進。
こんな家に居たくない。
ほとんど感情に流されるまま、あたしは玄関の扉を乱暴に開け放し、家を飛び出した。
「幸! どこに行くの!?」
後ろから母の呼び声がしたけれど、あたしは振り返らなかったし、立ち止まりもしなかった。
むしろその声を振り払うみたいに、夜の住宅地を駆け抜けて行く。