世界中の誰よりも

あたしの胸はぐらぐらと煮え立っていた。
嫌悪感と興奮で、わずかに吐き気がする。

左手に自分の部屋に続く階段が見えたけど、あたしはそのまま直進。


こんな家に居たくない。


ほとんど感情に流されるまま、あたしは玄関の扉を乱暴に開け放し、家を飛び出した。


「幸! どこに行くの!?」


後ろから母の呼び声がしたけれど、あたしは振り返らなかったし、立ち止まりもしなかった。

むしろその声を振り払うみたいに、夜の住宅地を駆け抜けて行く。
< 81 / 264 >

この作品をシェア

pagetop