世界中の誰よりも
夜の闇を走りながら、頬の痺れに気が付いた。
父に、初めてぶたれた。
男の人は結局女を力で押さえ込もうとするんだ。
男はみんな同じ。
父も、信也先輩も。
しばらく走ったところで、行き先に悩んだ。
すでに住宅地を抜けて大きな通りに出ていた。
家には帰りたくない。
だけど野宿なんて怖い。
あたしはここから比較的近い加奈子の家に向かった。
放任な加奈子の家ならこんな時間でも入れてくれると思う。
人通りもまばらな、しんと静かな通りを、足早に抜けた。