世界中の誰よりも

「幸、どうしたの? こんな時間に」


玄関のチャイムを鳴らすと、部屋着姿の加奈子が驚いた顔で迎えてくれた。

あたしはへへっと、頼りない笑みを返す。


「親と喧嘩しちゃってさ」

「また? 仲悪いね、ほんと」


加奈子はあたしを部屋へと促すと、濡らしたハンドタオルを差し出した。

どうやらあたしの頬が赤くなっているのに気が付いたみたい。


「今日、泊めて」

「私は良いけど、親が心配するよ」


心配なんかするもんか。
父も母も、あたしに文句を言うのは世間体を気にしてるだけに違いない。


その時加奈子の家の電話がけたたましく鳴った。
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