世界中の誰よりも
迎えに来たのは母だった。
母は加奈子と加奈子のお母さんに何度も頭をさげ、あたしの手を引いて加奈子の家を後にした。
「みっともない真似しないでちょいだい」
親というのは家庭内での揉め事が外に出ることを嫌う。
あたし自身はみっともない事をしただなんて少しも思ってない。
何も答えないまま、母の一歩後ろを歩いた。
母もまたそれ以上何も言わず、ただ二人の足音だけが夜の町に響く。
小さい頃はよく繋いでいた母の左手を、なんとなく見つめた。
ため息が静かに溶けた。