世界中の誰よりも
「門限とか、勉強しろとか。誰と何してたとか。うちの親はほんとウザイんだよ」
投げ付けるみたいにあたしは言った。
するとそれまで黙っていた愛美が、長い睫毛を伏せたまま口を開く。
「贅沢すぎるよ、幸は。心配してくれる人が居るって、幸せなことなのに」
愛美にはお父さんが居なくてお母さんは働いてる。両親がいつも家にいるあたしが文句を言うのは贅沢に見えるだろう。
それは分かるけど、素直に認める気にはならなかった。
だから思わず、言ってしまった。
「愛美は良いよね、口うるさい父親が居ないんだから」