【完結】泣き虫姫のご主人様
────二学期の始まり───
「行ってきまーす!」
今日から二学期が始まる。
走る度に、稚尋に貰ったネックレスが澪の胸元で揺れる。
あの時は、どうしてあんな事をしたのか、どうして稚尋が澪に謝ったのかは、よくわからない。
稚尋はちゃんと澪の事を考えてくれる。
それだけは伝わったから、大丈夫だと思う。
そんなことを考えていた時だった。
「わっ……!」
「あっ!」
澪は誰かとぶつかってしまった。
二人の鞄の中身がコンクリートの上に散らばる。
新学期早々、どうしてこうもついていないのだろうか。
本当嫌になる。
「あ、ごめんなさい!」
とにかく、散らばった荷物をなんとかしなくてはならない。
「いえ、私もボーっとしていたから……」
すごく、可愛い声だった。
その声に惹かれ、澪はぶつかった相手を見上げる。
「あ…………」
彼女を見た瞬間、澪は驚きを隠せなかった。
「あの……何か?」
「いっいえ、すみません」
彼女は例えるならば、フランス人形。
大きな丸い瞳に、長いまつげ。
その顔に、少しオレンジがかった艶のあるショートの髪の毛。
息をのむ程の美少女だった。