【完結】泣き虫姫のご主人様
* * *
「朝宮澪……か。」
風がオレンジがかった髪の毛を掬い上げ、舞う。
それは華麗な様だった。
「やっぱり……あの日の子だったんだ…………」
あの子からは、あの日と同じ蜂蜜の香りがした。
「近くでも、可愛かった」
そう思うと、ただ純粋に悔しくて、雛子は唇を噛み締めた。
「……また、会いたい」
澪ちゃんにも。
そして、ちー、あなたにも。
「ちー」
呟いた言葉は、風が掻き消してしまう。
いつからだっけ?
ちーに会いたいと思いだしたのは。
だから、こんな所まで来ちゃった。
どうしてだろう…………?