【完結】泣き虫姫のご主人様


 * * *


「朝宮澪……か。」


 風がオレンジがかった髪の毛を掬い上げ、舞う。


 それは華麗な様だった。



「やっぱり……あの日の子だったんだ…………」



 あの子からは、あの日と同じ蜂蜜の香りがした。



「近くでも、可愛かった」


 そう思うと、ただ純粋に悔しくて、雛子は唇を噛み締めた。



「……また、会いたい」



 澪ちゃんにも。


 そして、ちー、あなたにも。






「ちー」



 呟いた言葉は、風が掻き消してしまう。


 いつからだっけ?



 ちーに会いたいと思いだしたのは。



 だから、こんな所まで来ちゃった。


 どうしてだろう…………?


< 104 / 155 >

この作品をシェア

pagetop