【完結】泣き虫姫のご主人様




「え」



「借り物競争だろ? ビリにさえならなかったら、ご褒美あげる」



 その稚尋の声が、やけに澪の耳元で響いて聞こえた。


「ご褒美って…………?」


「妄想すんなよ~?」


 ケラケラと笑いだす稚尋。

 澪は一気に真っ赤になってしまった。


「しっ、してないってば!」


「姫はエロいからなぁ……」



 どっちが!!!




 澪は、軽く稚尋を叩いた。


「いって……ひでーな?」


「あんたが! そんな事言うからでしょっ!」



「そー?」



 何で平気そうな顔してんのよ。



「いいからどいてってば!」


 その時だった。



「なっ……誰!?」







 突然の物音に、澪は思わず身を震わせた。



 数分経っても、音の原因はわからない。



「なんか、崩れたんじゃね?」


 稚尋が面倒くさそうに頭を掻いた。



「そ、かな」



「なんか冷めたなぁ……帰るか?」



「うん」



 澪は笑顔で頷いた。


 とにかく、今日はもう、早く帰りたかった。


 頭を冷やしたい。それが一番の目的だった。



「じゃあ、体育祭のやつ。覚えとけよ?」



 稚尋は澪に笑いかけた。



「ばっ……ばかっ」




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