【完結】泣き虫姫のご主人様
頭がボーっとする。
「その瞳、ますます惹かれる」
そう言って、稚尋は澪の唇を解放した。
だけどそれは決して乱暴ではなくて、優しいキス。
そんな言葉がぴったりだった。
「稚尋……」
自然と溢れる澪の気持ち。
自由を奪われた澪には、「やめて」なんて選択肢は存在しなかった。
稚尋の意のままだ。
なかなか離してくれない稚尋の顔を見る事が出来ない澪。
そんな澪の瞳を見て、稚尋は何かを思い付いたようにニヤリと笑った。
「姫は……俺のもんだ」
「え!?」
稚尋は澪の首筋に、再度顔を埋めた。
稚尋の栗色の髪が、澪の頬をくすぐった。
澪の首筋に、鈍い痛みが走った。
なにしてるの?
そんな事を聞く暇なんてものはなく、澪はただ、彼を押しのけようと必死になっていた。
「見てみろよ」
ようやく離れた稚尋を少しだけ名残惜しく感じながらも、首筋に残った違和感に首を傾げた。
「……な、何よ」
ゆっくりと、澪は自身の首筋を携帯の画面でうつして見た。
「ちょっ……稚尋っ!?」
澪の首筋には、ちょうど目立つ場所に赤紫の小さな痣があった。
これは……。
「なんてものつけてるのよ!!」
紛れも無く、キスマーク。
顔を真っ赤にしながら喚く澪に、稚尋は悪びれる様子もなく笑った。
「だって……姫は俺のもんだから」
いつから稚尋のものになったのよ!!
そう叫びたかったが、その言葉はまだ残る余韻と共に飲み込んだ。
「……お前可愛いな」
稚尋はそう言って、澪からようやく視線をを外した。
「なっ!!」
稚尋と一緒にいると、私がおかしくなっちゃいそうだ…………。