【完結】泣き虫姫のご主人様







 日本で出会った稚尋に、笑顔はなかった。











『弥生ー?』



 その理由は、あなたのせいでしょ。


 五歳になっても。


 十歳になっても。


 ちーに本当の笑顔が戻らないのは。



















 本当は少し、弥生を嫌っていたの。






 弥生は何も稚尋の孤独をわかっていない。






 愛情を欲していた稚尋。


 それをわかってあげられるのは、雛子だけ。





 十三歳になった、雛子と稚尋。



















 ある日突然、雛子は稚尋に抱きすくめられ、言われた。




















『ずっと、好きだった』
















 そんな言葉を聞いた雛子に、驚く暇などやってきたのは。





『!?………んっ』






















 初めて触れる、男の子の唇だった。












 どうしたの?ちー。


 やだよ。


 こんなちー、知らない。


















 …………怖い。
















 瞬時に、そう思ってしまった。







 不思議。





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