【完結】泣き虫姫のご主人様
だって、雛子は稚尋のことが好きだったはずなのに。
本当なら、嬉しいはずなのに。
『嫌い!……ちーなんて、嫌いよ』
突き放してしまった。
傷つけてしまった。
『ごめん、雛』
こんなはずなんかじゃ、なかったはずなのに。
雛子は、稚尋を傷つけてしまった。
今まで一人ぼっちだったちーを、雛子は裏切った。
だから。
【雛も……ちーが好きだよ】
そう言ってあげたくて。
【ごめんね? ちー】
謝りたくて。
だからここまで来たのに。
この現状は何?
雛じゃなくて、澪ちゃんを愛してるちーがいて。
ちーを愛してる澪ちゃんがいる。
もはや、雛子の入る隙なんてない。
雛は邪魔者になったのかな?
チー。
“もう、手遅れなんだね”
雛子を見る稚尋の冷たい瞳。
稚尋には、雛子が悪者にうつっている。
雛は、どうしたらいいの…………?
「…………くっ」
そう考えると悲しくなって、雛子は一人涙を流した。
保健室の壁を一枚隔てて、喜びと悲しみが交差していた。
★マシュマロ心“雛子”
【END】