【完結】泣き虫姫のご主人様






「…………え?」


















 稚尋の少し骨張った長い指が、澪の長い黒髪をすく。
















「…………っ」




 そのうつろな稚尋の瞳に、澪の感情は揺さぶられる。



















 体が、稚尋の行動に怯えていた。



















「…………姫は……俺の事、どう思う?」






 稚尋の瞳に宿った、妖しい輝き。それは、澪の心を惑わせた。








 頭が、クラクラする。









 稚尋の腕の中から逃れようと試みてはみるものの、そんなことを許してくれる人じゃない。










 稚尋の腕の中、捕われのお姫様。




「馬鹿だなぁ……最初から、わかってたでしょ? 姫は、俺から逃げられないってこと」













「や……」



「言ってよ、澪の気持ち」




 その稚尋の声に、澪は動揺した。



















 大好きだよ。言ってもいいかな。







 稚尋の顔に笑みが灯る。



















「……ほら。言ってよ……」






 稚尋は私の言葉を待ってるんだ。そして、遊ばれている私。






 結局、私は稚尋には敵わないんだ。






 稚尋の渇いた唇に、澪はそっと唇を重ねた。












 突然の澪の行動に稚尋の手が、止まった。



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