【完結】泣き虫姫のご主人様








 ねぇ、稚尋、わかるでしょ?









「こっ、これが、返事だよ……」



 澪の、答え。











 一瞬瞳を見開いた稚尋はすぐに表情を戻し、澪の行動に笑顔を向けた。




「で?」








「は?」



 何、言ってるの?





 呆気にとられる澪に、稚尋は額を澪と合わせながら、言った。


















「……俺、言葉で聞かなきゃわかんないんだけど?」




 稚尋はそう言って、笑った。




















 本当、どこまで意地悪なのよ……。













「……なぁ……!」





 動揺が、隠せなかった。




「……っ」





 ゆっくりと、二人の唇が重なった。



 軽いキス。







 唇が離れた後も、澪は稚尋と視線を合わせる事が出来なかった。







「……言って」






 視線を反らしたら、何も言えなくなる。






「……やだ」



「…………言って」






 見ないで。顔が、あげられない。











 あぁ、どうして言えないんだろう。たった二文字のその言葉。




 “スキ”




 昔の私なら、迷わず言った。




 ただひたすらに、私をスキになって欲しくて。






 本当、どうしちゃったんだろう。




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