【完結】泣き虫姫のご主人様




 * * *





 二時間目の終わり、澪は教室へと姿を現した。



 すると見慣れた姿が目に入る。




「澪ーッ!!!」





「ちょっ……苦しいっ!」



 教室には、いつものように飛びついてくる彼女がいた。



「あ……ごめん、ごめん」



 彼女は、そう言って笑っていた。




「え~りぃ……?」


 島田 暎梨奈《シマダエリナ》


 澪の首を絞めた張本人である。












「親友を、殺す気かッ!」




 本当に少しだけ苦しかった。


 しかし何をされても、結局は許してしまう仲だ。











「ごめん! だって、今日はもう来ないと思ってたんだもーん!」





「はいはい、寂しかったのね? ……はぁ」






「ん……」


 面倒がかかる親友。



 しかし、いつも一緒にいてくれる大切な存在。











 それが彼女だ。




 暎梨奈は嬉しそうに澪の腕にすがりつく。



「大丈夫よ。えりのこと、大好きだから!」


「本当っ!? わ~い♪」




 暎梨奈は他人に甘えるのがうまい。







「えり……」


「ん?」


 澪は、暎梨奈をとても信頼していた。






 そんな暎梨奈だからこそ、澪は今まで沢山のことを彼女に相談してきた。







「相談があるんだ」







 だから、今回も。







 澪は稚尋のことを、暎梨奈に話した。



 すると、暎梨奈は笑って答えた。









「好きなんだよ、きっと!」


「え?」


 その意味が、澪にはイマイチよくわからなかった。






「稚尋って、けっこう女子の間では人気高いんだよ?まして、自分から女の子に声かけることなんてないし」


 “稚尋って、けっこう女子の間では人気高いんだよ?”




 納得は出来る。



 あの容姿で、モテない訳がない。







「ふ~ん」





 澪は平然を装って、静かにそう答えた。



「稚尋……澪が好きになったんだよ、きっと♪」



 暎梨奈の言葉に、澪は思わず目を見開いて驚いた。




 でも、もしそうだとしたら?



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