【完結】泣き虫姫のご主人様
先ほどから思っていたことだが、クラスメイトの視線が痛い。
学校内では既に、澪が稚尋に見初められたと言う噂が広まっているらしい。
私は稚尋がどんな人なのかもあんまりわかんないけれど。
そこまで稚尋は有名人だったのだろうか。
人との関わりを極力避けてきた澪には、よくわからなかった。
学校内の女子の視線が痛かった。
ただ一人、暎梨奈をのぞいて。
「えりぃ……マジで好きっ」
本当に、いい友達だ。
「なっ、泣かないでぇ!」
澪はポケットを探ってティッシュを探した。
その時。
何かが手に当たった。
「あっ……」
稚尋の、ハンカチ。
澪は一度は掴んだそれを、またポケットの奥へと押し込んだ。
私は、自惚れて、矛盾してしまうかもしれない。
私は、本当に貴方を信じていいの?
“私が好き”なんだって。
玩具なんかじゃなくて、“私”を好きなんだって。
よく、わからないけれど。