【完結】泣き虫姫のご主人様



 * * *






 澪は次の日、初めて学校を休んだ。



 そうは言ってもずる休みではない。


 単純に、風邪をひいた。



「ゴホッ……」


 朝から熱が下がらなかった。





 両親は共働きで家にいないため、誰も看病してくれる人はいない。




 一人っ子の澪は、静かな家に一人きりだ。





「……私、ダサッ」





 こんな惨めな姿、誰にも見せられない。




 ため息をつくと、お腹が鳴った。お腹がへった。




「もう、お昼か……」


 かと言って、誰かが食べさせてくれる、なんてこともない。




 仕方なく、澪はベッドから起き上がり、母親の作り置きを食べ、またベッドに潜り込んだ。










 カチカチと、時計の秒針の音だけが部屋に響く。





「ひま……」




 ただ寝ているだけで、なにもすることがない。




 安静にすることが一番だが、治りかけというのが一番退屈なのである。





 数分寝返りを繰り返し、そのまま澪は、やっと眠りについた。




「ん……」



 目がさめた頃、窓の外は薄暗くなっていた。


 ずいぶん寝たようだ。




 だけどまだ、熱は下がっていなかった。



 電話には、母親の声で“遅くなる”と伝言が入っていた。






 澪がまたベッドに入ろうとした時、玄関のインターフォンが鳴った。



「はーい! ケホッ」




 一体誰だろう。





 澪はふらつく足元に注意しながら、玄関の戸を開けた。









「はーい……え……」






 玄関の前に立っていたその人物を見た瞬間、澪の心臓は飛び出そうになった。
















「稚尋…………」





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