【完結】泣き虫姫のご主人様






 稚尋にとって澪は、初めて一目惚をした相手だった。



 今までも、恋は何度か経験した。



 しかしこれ程までに自分が欲するような恋は初めてだった。






 稚尋は、初めて自ら一人の女を求めた。


 きっと彼女だって自分に迫られたらOKするに決まっている。



 稚尋は、自分の魅力に酔いしれ、自信に満ち溢れていた。




 そうしていると、保健室の保健医が帰って来た。





 彼女の泣いてる理由は、小林と言う男にフラれたからだった。







 その男も、馬鹿げた協定の奴。


 稚尋に協定を気にする理由などなかった。


 今はただ、目の前にいる女の子を手に入れたいだけ。それだけだった。






 しばらくして、保健医が保健室から出ていった。






 澪は稚尋のベッドの隣のベッドに横になった。




 稚尋はそれを確認するかのように、澪のベッドに侵入した。







「お前、朝宮澪?」


 稚尋の声を聞いた澪は、目を見開き驚いていた。



 当然の反応だ。






 そうして稚尋は、澪にいくつか質問をする。







 そして。



「お前、俺達の間でなんて呼ばれてるか……知ってる?」




「知らない」



「泣き虫姫───……」





 あの、会話をした。



 彼女を手に入れるため、どんな手でも使う。



 稚尋には、絶対的な自信があった。





「姫って……」




 澪は稚尋と目を合わせようとはしなかった。



 そんな澪に稚尋は言った。


「姫……コバミより、俺と遊ばない?」







 勝った。

 これで彼女は俺のもの。



 そう、勝手に思い込んでいた。


< 33 / 155 >

この作品をシェア

pagetop