【完結】泣き虫姫のご主人様
その途端、真っ白な天井が視界に広がる。
ギシリとベッドのスプリングが、誰もいない保健室に響いた。
保健室は静かで落ち着くから好きだ。
人見知りの激しい澪にとって、この場所は心の休まる数少ない場所だった。
なんだか、とても眠かった。
泣き疲れたせいかもしれない。
澪が瞳を閉じ、眠りにつこうとした、その時だった。
突然の物音。
その音で、澪の眠気は一気に覚めてしまう。
「……!?」
飛び起きた澪の目の前に広がった光景。
その光景に、思わず腰が抜けてしまった。
「お前、朝宮 澪……?」
「……え?」
気が付くと、見知らぬ美少年が澪の顔を覗き込んでいた。
透き通るような栗色の瞳が、澪を捕らえる。
その視線に、すべてを見透かされているような気分になった。
何……この人。
「……あ……あの……」
戸惑う澪は、その場から動けなかった。
美少年は怯える澪の姿を見つめ、ため息混じりに口を開く。
「さっきの話、聞いてた。お前、コバミが本気でお前のことをフッたなんて思ってんのか……?」
「……え?」
何を言ってるの?
澪は美少年の突然の言葉に目を見開いた。