【完結】泣き虫姫のご主人様







 教室を見渡すと、女子ならず、男子までもが澪を見て笑っている。




 その人達は、ついこの間まで仲のよかった人達まで、様々だった。







 その事実に、思わず涙が込み上げてきた。





 そんな澪の様子を見ていた暎梨奈は、ため息をつきながら言った。



「まぁ、気にしない方がいーよ? こんなの見ても……えりは別に友達やめよーとか思わないから! てか稚尋嫌いだし」




「えりぃ……!」





 私は本当にいい友達を持ったと思う。



 暎梨奈がいなければ、弱虫な私は今ごろ登校拒否生徒だ。






「ありがとう……」



「泣~か~ないの」


「だって……」




 暎梨奈は、澪が泣き止むまで手を握っていた。



 信じられるのは暎梨奈だけ。
 澪はそう思っていた。







 誰が書き込みをしたのだろうか。サイト内で書かれた内容は、嫌になるほど鮮明に事実を書き表していた。


 あのサイトの存在があるかぎり、私はクラスで仲間外れにされ続ける。




 稚尋に関わっていなければ……私は普通に恋する一人の女の子だった。




 それなのに。





「稚尋が……」





 いけないんだ。






 しかしどうしても、言葉に出すことができなかった。




 そんな稚尋に今、心が揺れているのは紛れもなく自分だ。


 これでは稚尋の悪口など言えたものではない。




 澪は溢れ出る感情を抑え、保健室の扉を開いた。






「先生ー!」




「うわっ!? 朝宮じゃん。最近来ないと思ってたのに……」



 そう言いながら、冬歌はあからさまに面倒くさそうな顔をする。



 しかしそう言いながらも、泣き崩れる澪の背中を摩る冬歌。



 そんな冬歌に澪は言った。




「今は、泣きたいんです……っ」



 今はただ、誰かの腕の中で思いきり泣きたかった。



 自分が悔しくて、たまらなかった。





 今までは恋をすることは、幸せなことでしかなかった。



 それなのに、今は何もかもがおかしい。




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