【完結】泣き虫姫のご主人様
冬歌の言葉に、澪はただ驚くことしかできなかった。
冬歌が、稚尋の義姉。
それは全く予想していない答えだった。
「ん? どうしたの、そんなに口開けて。稚尋から聞いてないの?」
冬歌はそう言うと、不思議そうに首を傾げた。
澪はのんきな表情の冬歌にため息をつく。
知っている訳がない。
澪と稚尋は恋人同士でもなければ、友達でもない。
稚尋は自分自身のことなど一切語ろうとしない。
結局、稚尋のことを澪は何も知らなかった。
「冬歌先生が、稚尋の……お姉さん……?」
まだ整理がつかない頭で、澪はうわ言のように呟く。
必死に状況を飲み込もうと必死だった。
どうして今まで黙っていたのだろう。
あそこまで私のことを調べているのなら、私と冬歌先生の仲も知っているはずだ。
それなのに。
「……ま、義理のだけどね」
そう付けたしながら、ハハハと笑って見せる冬歌。
笑い事ではない。
「で? どこまでいったの? 稚尋と」
そう言いながら、冬歌は澪の反応を見て笑っていた。
何が面白いのだろうか。
「冬ちゃんまでそれ言うの!?」
中学生になんてことを言うんだこの人は。
仮にも教育指導者の言葉とは思えない。
「あら、意外」
そう言うと、冬歌はわざとらしく目を見開いて驚いた。
「ふざけてはくるけど……後は何もされてないし、してもいない」
それはやはり、私に魅力がないからなのだろうか。
そう考えると、段々と気持ちが落ち込んでいく。
澪はため息をつきながら、ゆっくりと自らの貧相な胸を見つめる。
「はぁ…………」
大きなため息をついた。
胸もお尻もないし、私って……本当に幼児体型。
本当に、中三?って自分でも思うくらいに成長していない。