【完結】泣き虫姫のご主人様
「もう、うんざり」
自分の発している言葉が、澪は信じられなかった。
今日の自分は一体どうしてしまったのだろう。
自分の口から、すらすらとこんな残酷な言葉が出てくるなんて、思ってもみなかった。
稚尋を傷つける言葉なんだということは重々承知だ。
「………………」
稚尋はただ、澪を見つめていた。
怒ることも、悲しむこともなく、ただ澪を見つめているだけだった。
澪の胸が、高鳴る。
やめてよ、そういうの。
稚尋はずるい……。
「ごめん……稚尋……今、私おかしい………」
どうかしてる。
自分から稚尋を求めるなんて。
うつむく澪に、稚尋は言った。
「俺の……せい?」
「……ちがうの」
違う。
稚尋のせいなんかじゃない。
稚尋が、悪い訳じゃない。
「聞きたい?」
「うん」
「傷つくかもよ?」
今の私は、きっと歯止めがきかない。
だけど。
「いいよ、姫の気持ち知りたいから」
稚尋は優しく微笑み、言った。
そんな切ない顔をする稚尋を見て、澪はまた泣きそうになってしまった。
しかし、澪は決心していた。
自分の気持ちをはっきりさせたいから。
「ちょっと、話したい」
そう言って、澪は視界に入った小さな公園を指差した。