【完結】泣き虫姫のご主人様







 やめたくても、やめられなかったんでしょう?



 突然過ぎるよ……稚尋。




「姫!!」


「え!?」


「目、つむってよ」



 突然の稚尋の言葉に澪は思わず身構える。




「今……なんで?」



「いいから」



 真剣な稚尋の瞳に捕われて、澪はそのまま言われるがままに瞳を閉じた。



 ………………。


 何だ、この緊張感。








 稚尋は、ゆっくりと澪に唇を重ねた。





「……っ!?」



 先ほどまで自分が願ったことが叶えられ、澪は状況がうまく理解できていなかった。




「?」




 キスの合間、突然口内に広がった異物感。






 不意に、口の中に何かが入てきた。


 それと同時に、稚尋は唇を離す。





「…………甘い」



 キスと同時に稚尋がくれたのは、苺味のあめ玉だった。


 稚尋は笑いながら、言った。




「甘いだろ〜」




「意味わかんないし……」



「あのさ」


「何よ……」


 稚尋は、いつもとは本当に違っていた。






「俺、待つから。」



 その顔は、真剣で、誠実な表情だった。


 知らない顔に、澪の心臓は高鳴る。





「……澪が俺のこと好きになってくれるまで」



 どうして彼は、そこまで私を想うのだろう。


「待つの?」


「そ。俺、待つ」




 そう言って、稚尋は真剣な瞳で澪を見つめた。



 その瞳は、逃げることすら許してはくれない。



 栗色の瞳。



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