【完結】泣き虫姫のご主人様
ねぇ、稚尋。
「……どうして、私なんかにそこまでするの?」
私には、そこまでの価値はきっとない。
私が稚尋の隣にいても、全然釣り合わない。
しかし、稚尋は平然と言った。
「好きだからでしょ。そんなの」
その言葉はあまりにもストレートで。
澪はその場を動くことが出来ずにいた。
「……私を?」
「お前以外にいねーだろーが」
「でも、待つって……私が稚尋を好きにならなかったら……どうするのよ」
私の言葉を聞いても、稚尋の瞳は輝きを失うことはなかった。
「……今は、そんなのわかんないじゃん」
凄く、真剣な顔だった。
「だから、嫌い。とか言うなよ……」
だって。
「あたしのこと、オモチャとか……思ってない?」
稚尋は出会った当初、澪の心を傷つけた。
澪はただ強引な稚尋が怖かった。
だけど今、澪の前には正反対の優しい稚尋がいる。
「思ってねぇよ」
すごく優しい声だった。
夜だし、二人っきりってこともあるけど。
今の私ね、ドキドキしてるの。
この、苺味のあめ玉のせいかもね。
だけど、ちゃんとした確証が持てないから、安易に返事は出来ない。
「じゃあ、変なこともしない……?」
澪の問い掛けに、稚尋は一瞬黙ってしまった。
しかし、次の瞬間呟くように言った。
「……わかんね」
稚尋にとって素直な答えなんだろうけど。
「やっぱ嫌いーっ!!!」