【完結】泣き虫姫のご主人様
「ちょっ……稚尋!」
抵抗出来る訳がない。
澪は稚尋に手を引かれるままだった。
「えりに許可とんないでよ。サボり」
そう言いながら、暎梨奈は澪に向かってであろう笑顔で手を振った。
暎梨奈も結局は応援することになったらしい。
『だって俺、まだこいつに何もしてないんだぜ?』
そんな稚尋の言葉を思い出し、澪は一人真っ赤になる。
本当、何なのよ……馬鹿。
顔を真っ赤にしながらも、澪は稚尋の後についていった。
向かった先は保健室。
中には冬歌がいた。
「何よ、あんたたち」
澪と稚尋の顔を見るなり、冬歌は露骨に嫌な顔をした。
隣では、はぁっ…と、稚尋のため息が聞こえた。
「冬歌ぁ……邪魔なんだけど」
「はぁ? お姉様に向かって何、その口の聞き方は!?」
稚尋の言葉に冬歌がキレた。
「お姉様って。離婚した奴をそうは呼びたくねぇんだけど」
離婚……?
稚尋の言葉に澪は妙に納得してしまった。
だから義姉弟でも苗字が違うのか。
なんだか意外だった。
冬歌が結婚してたなんて、澪は考えもしなかった。
「って、澪は知らねぇんだっけ?」
「知ってるよ」
「は?」
澪の答えに、稚尋は瞳を見開いて驚いていた。
「だって、冬ちゃんが教えてくれたもん」
そう聞くと、稚尋は冬歌を睨んだ。
「お前はなんでいつも勝手なことすんだよ」
稚尋はすっかり呆れてしまっている。
「いいでしょう、朝宮は」
「よくねぇっ!」
「ところで何しにきたの?」
冬歌先生。
簡単に稚尋の話を流しちゃったよ。
なんだか、冬歌と話しているときの稚尋は子供みたいだ。
可愛い、かも。
そんなことを考えていると、稚尋が澪の瞳を見ながら言った。
「何でもいいだろーが」
「はぁ? 意味わかんないんだけど」
稚尋の返答に、冬歌はため息をついた。
本当に呆れてる。