【完結】泣き虫姫のご主人様





 好き。



 そう言われて、嫌な気は全くない。




 ただ純粋に嬉しい。




 だからこそ、ちゃんと本当の恋がしたいとて思う。



 だからこそ、軽率な答えは出来ない。



 それは以前の澪では到底考えられないようなことだった。



 私……なんか、稚尋に会ってからおかしくなった?



 本当に、変わったのはお互い様のようだ。




 その時、澪の頭に一つの疑問が生まれた。



 それは、さきほどの暎梨奈の言葉だ。




 “えりが一番よく知ってるんだけど”




 そして。






 “相変わらずだな”


 昔を懐かしむような、稚尋の瞳。




 チクリと、澪の胸が傷む。



 澪はゆっくりと口を開いた。




「……私も、聞いていい……?」



「いいよ」



 稚尋の言葉で、澪は決意し、疑問を投げ掛けた。




「昔……えりと稚尋の間には、何があったの……?」






「…………!」



 澪の言葉に、稚尋は一瞬目を見開いて驚き、澪の瞳を見つめた。



 しかし、またゆっくりと澪から視線を外してしまった。




「…………稚尋?」



「………………ごめん」




 稚尋は澪と目を合わせようとしない。



 明らかに動揺していた。


 それは、二人の間に何かがあった証拠。



 澪はただ、謝る稚尋が不思議でならなかった。




「言ってくれる………?」




「ごめん……それは……」



 稚尋の口から発せられた言葉は。




 “それは……言えない”



 ただ、それだけだった。





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