【完結】泣き虫姫のご主人様




 初めは、ただ美人たと聞いて単に興味を持った。




 泣き姫……か。



 次も簡単に手に入るだろう、と稚尋は思っていた。



 しかし、澪は稚尋を拒絶した。



 キスをしようとした稚尋を……拒絶した。




『……嫌だっ!!』




 “嫌っ”




 その時、雛子と、澪が被ってしまった。


 だから今度こそ、絶対に手に入れたかった。


 どんな手を使ったとしても。


 しかし、過去に捕われたままの稚尋は、澪を泣かせてばかりだ。


 待っていたはずの君の言葉はいくら待っても貰えない。


 “大嫌い”



 そう澪に言われる度に、稚尋の心の古傷がチクりと傷んだ。




 まだ未熟な稚尋は、過去に捕われたままだ。



 澪を雛子と被せて愛している。


 澪は澪。


 雛子は雛子。


 わかっているはずなのに、どうしても気持ちが曖昧なまま。



 だから稚尋はまた、毎日澪を苦しめる。


 守りたいはずなのに、足がすくんで立ち上がれない。


 まじで。

 …………格好悪い。




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