【完結】泣き虫姫のご主人様
四月二五日。
今日の空は少し機嫌が悪そうに、厚い雲がかかっていた。
そんな日、澪の頭の中はハテナマークでいっぱいだった。
それは昨日、稚尋に言われたことが原因だった。
『……お前、コバミが本気でお前のことををフッたなんて思ってんのか……?』
その言葉が頭から離れなかった。
コバミが私のことを本気でフっていないなら、その理由は何?
思い出したくもないけれど、澪はあの時、きちんとフラれたのだ。
“ごめんな”と。
どうせ……私はモテないただの泣き虫女。
それなのに。
『泣き虫姫……』
なんて、絶対私をからかってるんだ。
小学生のころは淡い恋も何度かした。
しかしそれはやはり小学生の恋愛で、想いを伝えたらそこで終わり。
そんな恋だった。
「はぁ…………」
澪は昔を思い出し、大きなため息をついた。
そんな時だった。
突然、油断していた澪の両肩にズシリと負担がかかった。
目の前には長く、しなやかに伸びる腕……。
まさか。
澪は恐る恐る振り返った。
「おはよ♪姫」
顔の距離、わずか10cm。
そんな距離に稚尋はいた。
突然の出来事に、澪の心臓がはねる。
澪は本気で腰を抜かしそうになってしまった。
「さ、桜君!」
稚尋の瞳には、何か不思議な力があるみたいだ。
目があってしまったら、吸い込まれてしまいそうになる。
澪の反応に、稚尋は眉を下げた。
「桜君?今、稚尋って呼ぼうとしてただろ?なんで呼ばないんだ」
どうやら気が付かれてしまったらしい。
稚尋は小さな子供のようにいじけてしまった。
「だって……」
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