【完結】泣き虫姫のご主人様
* * *
「で? 何を聞きたいの?」
だいたい内容はわかっていたが、暎梨奈は一応聞いてみた。
澪は俯きながら、言った。
「えりと……稚尋に昔何があったのかなって思って」
とても気まずそうに暎梨奈を見上げた澪。
「……えりと?」
「うん」
はぁ~あ。
どこまで稚尋が大好きなの?なんて、つっこんであげたくなっちゃう。
ねぇ澪。
稚尋はそこまで夢中になるような男じゃないよ?
ま、えりも相当澪に大切にされてるみたいだけど。
本当、呆れるくらいにバカな子。
だから、優しく親友が教えてあげるよ。
全部ぜんぶ。
「で? 稚尋のことで聞きたいことって?」
人目につかない花壇に腰を下ろすと、暎梨奈が言った。
その瞬間、かぁ~と澪の顔が赤くなった。
照れながらも、澪は保健室であったことを暎梨奈に話した。
澪の話を聞き終えた暎梨奈は、クスリと笑った。
そして、澪の手を取って言った。
「稚尋はね、女子の敵だよ! ……昔あたしに稚尋がしたことはね?」
「…………?」
暎梨奈は、静かに言った。
「本当のえり自身を奪った」
その瞳は、まっすぐに前だけを見つめていた。
「……え?」
よく意味がわからなかった。
稚尋が本当の暎梨奈を奪った、とはどういう意味だろうか。
今までの暎梨奈は本当の暎梨奈ではないのか。
本当の暎梨奈って……何?
「えりは……」
暎梨奈は淡々と昔の事を語り出した。