【完結】泣き虫姫のご主人様





 ちゃんと否定してよ。



 稚尋は一変、笑顔で言った。




『彼女はえりだけだよ』



『じゃあ……その子は誰?』




 暎梨奈は流れる涙を堪えることは出来なかった。



『……ただ、遊んでただけ』



 は……?



 何、ソレ。



『意味わかんない……』



『だってお前、まだ中一じゃん』



 えりがガキだって言いたいの?



 自分だって同じじゃない。


 上級生の方がいいのなら、なんでえりなんかに声をかけたのよ…………?



 えりは稚尋が……好きだったんだよ?


 だけどもう、元の関係には、戻れない。






『も……別れる!』



『いいよ? 別れようか』



 稚尋は平然と言った。



 どうしてそんなに簡単に人を傷つけられるの?


 初恋がこんな恋愛なんて、ひど過ぎない?



 あんまりだよ……。



『……後悔させてあげる』




 復讐してやる。


 それが暎梨奈から稚尋に対する感謝の気持ち。



 本当に大好きだったから。


 “暎梨奈”を一生忘れて欲しくないから。



 稚尋に深い深い傷をつけてあげる。




 それから、沢山の稚尋の女の子を見て来た。



 そして、見つけた。



 すっごく可愛い女の子。




 本当に、お姫様みたいだった。


 この子を稚尋に仕向けて、稚尋からこの子を奪ってあげる。



 傷つきゃいいんだ。



 けれど、暎梨奈の計画は狂った。


 澪と稚尋が仲良くなった所まではよかった。


 しかし、澪が稚尋を見つけてくれなかった。



 澪は違う人を次々と好きになった。



 暎梨奈は焦った。




 それから日が経ち、暎梨奈は中学三年生になった。



 稚尋、えりも大人になったよ。


 でも、もう戻れないんだ。


 えりは稚尋が大嫌いだから。



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