【完結】泣き虫姫のご主人様





 そんなある日だった。



 暎梨奈は自分が運営している学校裏サイトを見ていると、一つの情報に目が留まった。



【朝宮澪が稚尋のお気に入り!?】



 澪が、稚尋を見つけてくれた。



 しかも、いいことに澪自身が勝手に動いて、稚尋が惚れちゃってる……。


 暎梨奈にとって、それは好都合だった。




 だから。



『澪~コレ!』



 わざと澪に学校裏サイトを見せた。




 案の定、澪は動揺してくれた。



 本当、面白いように計画が進んでいく……。


 暎梨奈は笑いをこらえることが出来なかった。





 最後に、澪を暎梨奈が奪ってしまえば………計画は完成。




 稚尋、えりは稚尋が大嫌いだけど、稚尋にはえりを忘れて欲しくないの。



 全てを話し終えると、暎梨奈は拳を握り、黙った。



 澪は、冷や汗が滴るのを直に感じた。




「えり? 何、言ってんの?」



 澪の声が震える。



「……えりと稚尋の過去」


 顔を強張らせる澪に、暎梨奈は平然と答えた。



「学校、裏サイトも?」



「そう。澪から友達も、えり以外なくしてやろうと思ったの……で。今は皆澪に近づかない」




「そ、んな」



 なんで。


 大好きだったのに……。


 ずっと……親友だって、思ってたのに…………。



 全部、仕組まれてた事だったの……?



「えり……」



 澪が名前を呼んだ瞬間、暎梨奈が立ち上がった。



「呼ばないで。えりの名前」



 澪を見る暎梨奈の瞳は、氷のように冷たかった。



 そこに、以前の笑顔は見られなかった。


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