【完結】泣き虫姫のご主人様




「痛っ……」



 顔をしかめる澪を見て、暎梨奈は笑った。



「痛いでしょう? ……でも、えりの心のほうがもっと痛いの」



 狂ってる……。



 そう思った。



「澪は、本当は何も悪くないんだよ? ただ、稚尋に目をつけられたから、傷を負うの。稚尋なんて……大嫌いでしょ?」



 可哀相な子。

 そう言って、暎梨奈は再び高らかに笑った。




「私は、傷つかないよ」




 ヒリヒリと痛む頬を押さえながら、澪は暎梨奈に向かい言った。




「は?」



「だって私……何があってもえりの友達だから」



 えりは私がいじめられていた時も、ずっと一緒にいてくれた。
 それが計画的だったとしても、小さな希望として、えりの存在は本当にありがたかったんだ。

 私は、えりを嫌いになんてなれない。


 しばらく暎梨奈は黙り込んだ。



 そして、言った。



「何……言ってんの? だからえりは澪が大嫌いなんだよ!!」



 澪の顔面目掛けて、暎梨奈の平手打ちがとんでくる。



 先程立ち上がったばっかりだったけど、また転ぶのか。



 そんなことを感じながら、澪は瞳を閉じた。



 暎梨奈の気が済むのなら、もうなんだってよかった。


 澪は覚悟を決めた。



 そして快音が、空に響いた。



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