【完結】泣き虫姫のご主人様





 今の時期に戻ってくるなんて。


 雛子の行動を稚尋は不思議に思ったが、すぐに嫌な考えが浮かんだ。



 …………復讐?



 暎梨奈のように、雛子も復讐が目的なのだろうか?



 だとしたら、また澪に危害がいくのかもしれない。



 どうしても、それだけは嫌だった。




 守れなかった過去を、消し去るためにも絶対に彼女を守る。


 澪だけは守り抜く。


 だから。


『日曜日、デートしよう』



 稚尋は澪をデートに誘った。






 デート当日。


 澪は稚尋の指定した場所にいた。


 爽やかな色をしたワンピースを着て。



 ……可愛い。


 直感的にそう思った。



 そして、澪の容姿はあの日の雛子と被ってしまった。


 真っ赤なカチューシャに、長い黒髪。




 俺のものにしたい。



 早く……早く。




 その日の夜。


 稚尋はベットに横になったまま、何度も携帯の画面を見つめた。



 雛子が来る。

 そう考えただけでため息が出る。



 だけど、これにちゃんとかたがついたなら、俺は本当に澪を愛せる。



 窓の外には、ただ満月が浮かんでいるだけだった。




 季節はもうすぐ秋になろうとしていた。



★ビターな1日


【END】


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